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インナーチャイルド

  • E-01 (小説|純文学)
  • いんなーちゃいるど
  • ナカノヒトリ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 42ページ
  • 400円
  • 2026/6/21(日)発行
  • 大人になった記憶はないのに、

    子どもだったことは覚えている。


    思春期の子どもが主人公の短編集です。

     ー「まるよりも、もっと。まあるになりたいの」という小学生。
     ー甘いソーダを飲ませてもらえない家の、女の子。
     ー風で飛ぶあたしのTシャツ。一番最初に生まれたあたし。ついてない。


    やわらかくて冷たくて、爽やかでぞっとする。
    いつかの「あの頃」を綴った三編を収録。


    ◆こんなひとに

    ☑きれいなものを見てぞっとすることがある
    ☑子どもの頃を思うとモヤモヤする
    ☑やわらかい気持ちを思い出したい
    ☑「本日の新刊」はチェックしたい派


    ◆冒頭試し読み

    まあるになある

    (試し読み)

    「わたしはね。まあるになりたいの」

     かき氷のシロップを選んでいたら、妹がつぶやいた。
     妹はとっくにかき氷を食べ終わっていて、いまだ真っ白なかき氷の前でシロップを選ぶ俺を眺めている、ようだった。
     俺の目線はブルーハワイの青とイチゴの赤の間を行ったり来たり、妹なんて見ていない。青と赤、交互に目線を走らせる途中に妹の残像があった気がしただけだ。



    葉月、金魚鉢いっぱいのソーダ水を

     ランドセルを玄関に放り投げて、ミコの家に向かった。
     ミコと別れてからまだ十分も経っていないはずなのに、ミコの汗はすっかり引いていた。

    「うわ、葉月。汗やばいね」

    「しょうがないじゃん。急いで来たんだもん」

     ごしごしとハンカチで汗をぬぐった。
     二階にあるミコの部屋に向かうと、階段を上ったとたん、むわっとした熱気に包まれる。
     せっかくぬぐった汗がまた噴き出た。なんだよもう。これだから夏は嫌なんだよ。

     夏生まれでも、夏は暑い。そりゃそうだ。人間だもの。
     ミコの部屋は、キンキンに冷えていた。汗が一気に冷えて、気分爽快。 


    ガーデン‐バラエティ

     風が強く晴れた日は、家より先にお隣さんの家の庭をのぞく。

     車を何台も停められるくらいに広い、砂利が敷かれた庭。
     その一角に、わが家のタオルが二枚とあたしのTシャツが落ちていた。やっぱりね。予想通り。

     お隣さんの家の門はずいぶん前に壊れてしまっていて、ずっと開いたままだ。
     あたしが急に止まったものだから、ランドセルに付けた給食袋がぶらぶらと揺れる。
     そのたびに、給食袋が門を出たり入ったり。

     インターホンを鳴らしたけど誰も出てこない。
     あたしは「おじゃまします」とつぶやいて、素早くわが家の洗濯物を拾いに入った。
     タオルは乾いた砂利の上に、あたしのTシャツは抜かれた雑草の上に落ちていた。持ち上げるとあたしのTシャツだけ泥がついている。



    ※すべてweb閲覧用に改行を変えています。

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