27歳ともなれば、友だちはみんな自分の人生を歩んでいる。
資格を取ったり、転職を考えたり、恋人ができたり、結婚・出産したりとその様子はさまざまで、そんな中、今はかかわりの薄い友だちの誕生日までいちいち思い出したりしない。
ましてや、学生時代のように誰かの誕生日だからといって、手料理と酒を持って自宅に押しかけるなんてことは本当に稀で。誰からもメールの一通さえ来ないのは、そういうこと。
『花のよう』
その美しい人は、野辺に咲く花のようにひっそりとたたずんでいた。
僕はそこが大学の図書館であることをしばし忘れた。