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文学フリマ広島8出店者
海から来たアザラシ亭(ブース: く-32)
プレリュード・フォー・ ロンリー・ボーイ&ガール
こちらのアイテムは2026/2/8(日)開催・
文学フリマ広島8
にて入手できます。
くわしくは
文学フリマ広島8
公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)
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プレリュード・フォー・ ロンリー・ボーイ&ガール
く-32 (小説|ファンタジー・幻想文学)
ぷれりゅーど・ふぉー・ ろんりー・ぼーいあんどがーる
青川志帆
書籍|A5
8ページ
100円
2024/9/8(日)発行
病を患い、死を覚悟した孤独な少女は、ホスピスで不思議な少年と出会う。 少年の正体とは? そして少女が選ぶ未来とは……? これは孤独なふたりが奏でる序曲(プレリュード)――。
中綴じ本。表紙フルカラー。二段組8ページ。
※こちらの本は短編集「ガールズ・ロンド」と「ボーイズ・セレナーデ」を両方ご購入いただいた場合、セット特典として無料になります。
【試し読み】
余命を告げられて、一ヶ月が経つ。
もとから、長く生きられないとは知っていた。
だけど、余命を知る前は「もしかしたら」と思う心を捨てられなかった。
新薬の開発が間に合うかもしれない。なにかの奇跡で順番が狂い、ドナーが現れるかもしれない。
――奇跡なんて、起きっこない。
諦めてから、心は凪いだ。
病院からホスピスに移って、無心に絵を描いていた。
私の絵なんて上手でもないしセンスがあるわけでもないから、ただの自己満足なんだけれど。
ここに私がいたんだ、とどうにか残したかったのかもしれない。
いつものように、車椅子でホスピスの敷地にある池のほとりまで移動する。
転落防止のために柵がぐるりと池を取り巻いていた。
ひそやかに水をたたえる池には、蓮の花が浮いている。
私は持ってきたスケッチブックに、鉛筆で絵を書き殴る。
何度となく描いた、池と蓮の花の絵。
そうして、待った。
「――こんにちは」
彼が声をかけてくれるのを。
振り向くと、線の細い少年が立っていた。
彼はいつものように日傘をさしていて、その手には手袋がはまっている。
男の子でも、最近は夏には日焼けケアをするとどこかで聞いていたけれど、夏でも長袖長ズボンの彼は神経質すぎる気もした。
暑くないのだろうか。
「……こんにちは。また来たのね」
「うん」
少年は白い肌に、金髪に赤紫の目を持っていた。
あの赤紫は、夜に近づいた夕焼け空に一番近い色合いをしている。
何度も水彩絵の具を混ぜては赤紫を作ったけれど、どうしてもあれほど澄み切ったきれいな色はできない。
文句なしに端整な顔立ちをしているのに、どうしてか印象が薄い。
別れたあと、彼の顔をすぐに忘れてしまう。不思議な話だ。
初めて会ったとき、「アイキャントスピークイングリッシュ……」と答えたら、
「ハローぐらいは言えるでしょ」
と日本語で言われ、笑われたのだった。
初めて会ったのは、二週間前。それから、私がこうして池の絵を描いていると、彼が現れるようになった。
短い会話のなかで、彼が祖母の見舞いに訪れていることを知った。
その祖母だけが日本人で、あとはイギリス人の家庭なのだと。
父親の仕事の都合で小さいころから日本に住んでいて、だから日本語が得意なことも。
私は、彼との会話を心待ちにしていた。
【続きは製本版でお楽しみください】
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