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文学フリマ広島8出店者
うたかたの森(ブース: え-34)
〜花〜 宝物庫の魔女
こちらのアイテムは2026/2/8(日)開催・
文学フリマ広島8
にて入手できます。
くわしくは
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〜花〜 宝物庫の魔女
え-34 (詩歌|その他)
〜はな〜 ほうもつこのまじょ
織月なでこ
書籍|B6
94ページ
1,000円
2024/2/18(日)発行
大事なら、しまっておきなさい。 大事なら、持っておきなさい。 ポケットの中でしわしわになった、パンジーの花びら。
寝るときも・出掛けるときも一緒だった、うさぎのぬいぐるみ。砂の中から見つけた、桃色の小さな貝殻。
誰かから、誰かへ。手渡され、確かな時や温もりを重ねてきたものたち。
魔女たちはそれらを【宝物】と呼び、然るべき時が来るまで館で守っているという。
~花~ 『宝物庫の魔女』
☆以下、試し読み☆
①五文字しか書けない便箋(鷺草)
【序章】
夢には、際限がない。 繋がりも、終わりも、入り口も不鮮明――だけど。 あなたはずっと、呼ばれているのよ。 あなたしか開けない、扉の向こう側から。
◯ 「もしもし」
「宝物庫の魔女よ。聞こえているわ。鳥のさえずりのような、かわいらしいお声ね」
受話器の向こうから聞こえる、涼やかな少女の声。それは静寂の中でちりん、とゆるやかな一音を立てて消える、風鈴にも似ていた。
「突然のお電話、ごめんなさい。あの……自分でも“おかしい”と思うのですが」
「なぁに」
「私は、誰かに【何か】を伝えなければならない気がするのです。けれど、伝えるべき相手や【要件】に、覚えがなくて……」
“今・話している少女”が“何も覚えていない”ことが、今回の疑問を解く鍵だ。
「――オーケー。時間のあるときに、館にいらっしゃい」
膝の上にいる仔猫が、にゃみん、と鳴いた。 “大丈夫、彼女ならちゃんと選べるわ”と、魔女は仔猫の頭を撫でて笑っていた。
◯◯ 雨上がりの、少し冷え込む日の午後。
“こちらでよろしいでしょうか”と、両手を前で丁寧に揃えた少女が、魔女の館にやってきた。黒いブーツの先が水溜まりに濡れて、きらりと光っていた。
「あなたには、真っ白な――鷺草(さぎそう)の【便箋】を渡しましょう」
便箋に描かれたその花は、驚くほどに白く、細い。 蝶々とはまた違うが、今にも何処かへ飛び立っていきそうなほどに――まるで“息をして・生きている”かのような錯覚を覚える。
「私は今まで、手紙を書いたことがありません」
「何も難しくないわ。思っていることを、素直に言葉にするだけだもの。今みたいに」 「ですが……」
言葉に詰まることはあっても、決して自分の思いを偽ったりはしない。そんな少女を微笑ましそうに見つめる魔女は、更にこう付け加えた。
「ひとつ言うと、この【便箋】は、五文字しか書けないから」
「……!」
「書き間違えたときのために、ふたつ渡しておくわね」
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