早蕨号、異世界をゆく
- く-23〜24 (小説|ファンタジー・幻想文学)
- さわらびごう、いせかいをゆく
- 野間みつね
- 書籍|A5
- 64ページ
- 400円
- https://mitsune.jp/Kawara/k_b…
- 2016/8/11(木)発行
★和綴じ/表紙本文共にオンデマンド印刷です★
……それにしても、よくもまあ此処まで夷人臭い連中ばかり歩いているものだ。
俺、赤糟毛馬の早蕨は、土方歳三と江戸以来箱館までの転戦を共にした乗り馬である。「千美生の里」の中にある我々の“作品世界”とやらから突然に行方を眩ましてしまった伊東甲子太郎の亡霊を捜す為、土方と俺は、里の中にある他の“作品世界”へと踏み込むことにした……。
ウェブ上の交換日記「里の茶店 万年貸切部屋」(現在は閉鎖済み)で2002年9月に起きた「亡霊先生失踪事件」を題材にした作品。表紙・本文共にオンデマンド印刷、少部数で刊行します。再版予定はありません。なお、和綴じ装幀につき、糸のほつれや紙のズレなど些少の難がある場合がございます。予め御了承ください。
=== 以下抜粋 ===
俺がそんなことを考えている一方で、土方は、〝天下御免手形〟の効き目を試そうと考えていたらしい。自分が進んでいた方角から歩いてくる一団に声を掛けていた。……夷人臭いという以上に、人間離れした容姿の奴が混じっている。まるで猫と人間を足して二で割ったかのような顔の子供がしゅるしゅるっと近付いてきて、声を掛けた土方を、無躾なくせに愛嬌のある表情で上から下まで眺め回した。
「おじさんも冒険者? 西から来たにしちゃ、訛りのない共通語だけど」
「お、おじさん?」
やや心外といった風情で土方が呟く。猫目猫耳の子供は、くすくすっと笑った。
「見たとこ三十過ぎだろ。おいらから見たらおじさんだよ。……へーえ、変わった剣を持ってるねえ。長いのも短いのも、綺麗に曲がってるねえ。でも、そんな風に差してたら、抜きにくくない? ねえ、おじさん、抜いて見せてって言っても怒らない?」
驚いたことに、その子供は恐ろしくあっさりと土方の間合に入り込むと、腰の二刀に物珍しそうに顔を近付けて、しげしげと眺め始めた。……どうやら、見てくれに騙されてはならぬ技量の持ち主らしい。
───「弐 りはあしあ世界」より
