「人形」をテーマにした読み切り短編集です。等身大の人型をした動く人形から、比喩としての人形、奇妙な噂がついたある作家の人形たちなどの「人形」の物語が6編収録されています。ファンタジーを舞台にした物語が多めです。価格は1000円です。
以下、収録している作品の一部を紹介いたします。
リザの体の中はとても綺麗だ。色とりどりの宝石や鉱物が収まっている。その一つ一つに魔力が宿り、リザを動かしている。人形の身体と部品に込められた魔力の組み合わせによって核が変わり、それが個性となる。能力が高いと自然物を操る事も出来るらしい。
少年であるクレスは人形であるリザとともに過ごしてきた。だが、ある日、父親がリザを処分すると言い出す。抵抗するも進んでいく話に、クレスはリザの手をとって逃げ出した。あてのない逃亡だったが、動けなくなったリザとクレスの前にある女性が現れて――。そして、思わぬ形で運命の歯車は動き出す。
もし私が私でなかったら、彼が彼でなかったら、きっとこの言葉の次にあるのはもっと輝かしいものだった。それが喜びか悲しみ、どちらを生むとして、それはもっと日常的なものだった。
OLとして働く主人公は、ある日同僚から「機械人形がやっている喫茶店」の話を聞く。興味を持った主人公は休日にその喫茶店を訪れるが、そこで働く機械人形かもしれないシェルに一目惚れしてしまう。恋なんてしたくなかった、それでも恋してしまった主人公の結末は――。
千年続く砂嵐があって、その真ん中にある家での暮らしに、新しい住人が加わった。名前は、二人の名前からとって、アス。これはスウのアイデアだ。
ずっとふたりで暮らしているスウとアイはずっと何も変わらない日々を過ごしていた。けれど、そこに喋らず食べず動かない、けれどとても美しい訪問者が現れる。ふたりは訪問者に夢中になって――。不思議な世界観で語られるどこかいびつな物語。