【文フリ福岡初売】絞り出しミックスナッツ
- I-59〜60 (小説|ファンタジー・幻想文学)
- しぼりだしみっくすなっつ
- 野間みつね
- 書籍|A5
- 60ページ
- 300円
- 2026/2/8(日)発行
……女誑しなら、良かったかもなあ……
トーキョー・シティ特別区の中学二年生・吹奏楽部に所属する佐野貴美香は、競演会前の大会で、“兄の出涸らし”と言われているらしきティンパニスト少年の噂を耳にした……
一次創作4本「噂の出涸らし」、「ちいさなおおかみルウのぼうけん」、「倫秋兄様その後の奮戦記」、「死而後已」と、二次的著作物ではない二次創作(『小説BADOMA』続編の前日譚)「友達の引越」の計5本を、それぞれ全てリライト/リバイス/書き下ろして収録。
=== 以下抜粋 ===
頼山倫秋が通っている路那ハイスクールは、トーキョー・シティ特別区内の公立では間違いなく五指に入る学力レベルの高等学校である。
十一月の或る放課後、倫秋は、その路那ハイスクール、通称“ルナハイ”のある第八ブロックから最速トレインで三十分弱の時間を掛け、第十一ブロックへ赴いた。有名な学校が幾つも集中していることから、別名“スクール・タウン”とも呼ばれる行政区である。
「済みません、草羽辺ハイスクールって、何番のバスで行けますか?」
メインストリートである落葉松通りで倫秋に捉まった男子高校生は「草羽辺?」と首をかしげた。
「日下部じゃなくて草羽辺の方ですか? そっちは此処を右に入って道なりの徒歩五分で行けますけど……女子高ですよ? 日下部なら六十二番のバスです」
「あー、日下部、はい日下部です。有難う」
にこっと笑って応じながら、倫秋は内心で冷や汗を掻いていた。
(女子高って、えええ……不覚……紀博の奴に訊く前に別の誰かに訊いてみるべきだったか……いや、ウチの奴らに訊くのは拙いと避けた時点で無理だった……)
昨日の、弟の紀博との会話を思い出す……。
『なあ紀博、草羽辺ハイスクールって何処にあるか知らないか? 簡易ネットで調べたけど情報が出てこなくてさ……何処のブロックにある高校なのかな』
『なぬ。草羽辺?』
あの時、弟がやけに自分の顔を正面からじろじろ見てくるな、とは思ったのだ。
『知ってるけど、誰かに用なの?』
『ああ、友達の友達にって用を頼まれたんでね』
『……さいですか。スクール・タウンにあるよ。第十一ブロックね』
弟の口許に僅かに浮かんだ笑みの理由も、今ならわかる。きっと弟は、草羽辺ハイスクールが女子高であると知っていながら教えてくれなかったに違いない。……兄の考えていることなど直ちに見通したぞ、というわけだ。
(あンのヤロー、帰ったら徒じゃ済まさんぞ……)
……一般に開放されている簡易ネットでは、特に女子高や女子大の場合、学校側の“安全上の理由”から情報が伏せられ、無許可の野良記事さえも検索にヒットしない設定にされていることが少なくない。特に“名門”と呼ばれるような私立女学校側からすれば、「まともな家の女子であればそもそもネット掲載情報など存在せずとも受験して入学してくれるから問題ない、誰でもアクセス出来る簡易ネットに情報を載せるのは百害あって一理なし」という思考になるのである。
(つまり、あの娘は、そういう女子高の生徒だったってことかな……ハードル高いなあ……)
───「倫秋兄様その後の奮戦記」より
