こちらのアイテムは2026/10/4(日)開催・文学フリマ福岡12にて入手できます。
くわしくは文学フリマ福岡12公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

【文フリ福岡初売】絞り出しミックスナッツ

  • I-59〜60 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • しぼりだしみっくすなっつ
  • 野間みつね
  • 書籍|A5
  • 60ページ
  • 300円
  • 2026/2/8(日)発行

  • ……女誑《たら》しなら、良かったかもなあ……


     トーキョー・シティ特別区の中学二年生・吹奏楽《ブラスバンド》部に所属する佐野貴美香《さのきみか》は、競演会《コンクール》前の大会で、“兄の出涸《でが》らし”と言われているらしきティンパニスト少年の噂を耳にした……

     一次創作4本「噂の出涸らし」、「ちいさなおおかみルウのぼうけん」、「倫秋兄様《みちときにいさま》その後の奮戦記」、「死而後已《ししてのちやむ》」と、二次的著作物ではない二次創作(『小説BADOMA』続編の前日譚《たん》)「友達の引越」の計5本を、それぞれ全てリライト/リバイス/書き下ろして収録。

     === 以下抜粋 ===

     頼山倫秋《よりやまみちとき》が通《かよ》っている路那《るな》ハイスクールは、トーキョー・シティ特別区内の公立では間違いなく五指《ごし》に入《はい》る学力レベルの高等学校《シニア・ハイ》である。
     十一月の或る放課後、倫秋は、その路那ハイスクール、通称“ルナハイ”のある第八ブロックから最速トレインで三十分弱《じゃく》の時間を掛け、第十一ブロックへ赴《おもむ》いた。有名な学校が幾《いく》つも集中していることから、別名“スクール・タウン”とも呼ばれる行政区である。
    「済みません、草《くさ》羽辺《はべ》ハイスクールって、何番のバスで行けますか?」
     メインストリートである落葉松《からまつ》通りで倫秋に捉《つか》まった男子高校生は「草羽辺?」と首をかしげた。
    「日《くさ》下部《かべ》じゃなくて草羽辺の方《ほう》ですか? そっちは此処《ここ》を右に入《はい》って道なりの徒歩五分で行けますけど……女子高ですよ? 日下部なら六十二番のバスです」
    「あー、日下部、はい日下部です。有難《ありがと》う」
     にこっと笑って応じながら、倫秋は内心で冷や汗を掻《か》いていた。
    (女子高って、えええ……不覚……紀博《のりひろ》の奴に訊《き》く前に別の誰かに訊いてみるべきだったか……いや、ウチ《ルナハイ》の奴らに訊くのは拙《まず》いと避けた時点で無理だった……)
     昨日《きのう》の、弟の紀博との会話を思い出す……。
    『なあ紀博、草羽辺ハイスクールって何処《どこ》にあるか知らないか? 簡易ネットで調べたけど情報が出てこなくてさ……何処のブロックにある高校《シニア・ハイ》なのかな』
    『なぬ。草羽辺?』
     あの時、弟がやけに自分の顔を正面からじろじろ見てくるな、とは思ったのだ。
    『知ってるけど、誰かに用なの?』
    『ああ、友達の友達にって用を頼まれたんでね』
    『……さいですか。スクール・タウンにあるよ。第十一ブロックね』
     弟の口許《くちもと》に僅《わず》かに浮かんだ笑みの理由も、今ならわかる。きっと弟は、草羽辺ハイスクールが女子高であると知っていながら教えてくれなかったに違いない。……兄の考えていることなど直ちに見通したぞ、というわけだ。
    (あンのヤロー、帰ったら徒《ただ》じゃ済まさんぞ……)
     ……一般に開放されている簡易ネットでは、特に女子高や女子大の場合、学校側の“安全上の理由”から情報が伏せられ、無許可の野良《のら》記事さえも検索にヒットしない設定にされていることが少なくない。特に“名門”と呼ばれるような私立女学校側からすれば、「まともな家の女子であればそもそもネット掲載情報など存在せずとも受験して入学してくれるから問題ない、誰でもアクセス出来る簡易ネットに情報を載せるのは百害あって一理なし」という思考になるのである。
    (つまり、あの娘《こ》は、そういう女子高の生徒だったってことかな……ハードル高いなあ……)

         ───「倫秋兄様その後の奮戦記」より

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