真実の鏡
- I-59〜60 (小説|ファンタジー・幻想文学)
- しんじつのかがみ
- 野間みつね
- 書籍|A5
- 80ページ
- 400円
- https://mitsune.jp/Epub/bibi/…
- 2024/8/12(月)発行
- 扉・人物紹介背景等原画 星村朱美(ホシムラアケミ)
色んな意味で、最高の雇い主だったよ。
探索に入れば必ず犠牲者が出るが故に“人喰い屋敷”と呼ばれている古代魔道王国時代の貴族の別荘だったという遺跡に足を踏み入れた若き魔道士セルリ・ファートラムは、その一室で、隠された真実を使用者に教えてくれる古代の魔法工芸品“真実の鏡”を発見する。しかし、その鏡には、向かい合った相手の魂を喰らうという噂があった……
長編ファンタジー『魔剣士サラフィンク』の登場人物である“暗黒魔道士”セルリ・ファートラムの青年期を描く傍伝シリーズから、書き下ろし作品及びアンソロジー等に寄稿した短編の改訂作品、計6本を収録した短編集。
=== 以下抜粋 ===
その日の午後、アタシは、行き付けの冒険者の店“踊る人魚亭”に足を向けた。
ドムから聞いた限り、件の魔道士は、探索毎に店を替えている。多分、まだ、満足出来る働きをしてくれる冒険者パーティーと出会えていないんだろう。
だったら、まずは、自分か行き付けの店に顔を出して親仁さんに色々話をしておき、もしもその魔道士が店に来たらアタシを紹介してくれ、と頼んでおくのがいい。
そんなことを考えつつ店に足を踏み入れたアタシは、目を円くした。
親仁さんとカウンター越しで話をしている、六尺棒を片手に携えた黒ローブ姿の、長い銀髪を首の後ろで括った長身の人間男性――って、えっ? ドムが話してた件の魔道士の背恰好と同じじゃない!?
もしそうなら随分とラッキーだし、相手とは“縁がある”と思ってもいい。
アタシは足音を立てないように歩み寄り、ふたりの話に耳を欹てた。
「……なので、魔道士の居るパーティーでなくとも差し支えはありません」
やや低めに落ち着いた、穏やかで優しげな声には、濁りも掠れもない。吟遊詩人に匹敵するくらい“佳い声”の持ち主だ。
「私が探しているのは古代魔道王国時代の呪文書で、それだけは全て自分の取り分にさせてもらいますが、それ以外の宝物類が見付かっても、売り払って報酬に上乗せすることを考えています」
うんうん、これは噂の魔道士だ、間違いない――と確信したアタシは、敢えていきなり相手に声を掛けた。
「ねえ、アンタが“古代の呪文書しか探さない”っていう魔道士?」
相手は吃驚したように、傍らのアタシを灰色の瞳で見下ろしてくる。……あー、凡庸な顔立ちではないけど美男子と表現するには屈折があり過ぎる。何て言うのかなぁ、巧い表現が咄嗟には思い付けないけど、仮に悪事を働くとしても、コソコソするより頭を上げて平然とやりたい……って考えてそうな感じ。
───「トラムのこと」より
