The 103rd
- I-59〜60 (小説|ファンタジー・幻想文学)
- ざ・とさーど
- 野間みつね
- 書籍|A5
- 80ページ
- 500円
- https://mitsune.jp/Over100-Ki…
- 2023/5/27(土)発行
祝! 刊行物100冊突破!!
スタール王国の都レイリーで軽い昼食を摂っていた俺・サラ=フィンクとミルシェは、同じ店に入ってきた奇妙なふたり連れにふと目を惹かれ……
野間みつね個人サークル「千美生の里」の刊行物が、2022年8月、通算100冊を突破。
有志の皆さま(猪川朱美(星村朱美)さま/高井玖実子さま/たつみ暁さま/服部匠さま/服部つぐのりさま/和田明美さま(以上、五十音順))からのお祝いメッセージや作品、そして野間みつねからの返礼作品を併せて収録した、記念の一冊。
装幀も普段より気合が入っており、上製本表紙からして箔押しが4色も乗っていまして(背表紙含む)。
中も、二色刷やら見返し特殊紙への印刷やら、雰囲気を壊さない程度にですが、盛り盛りになっています。
=== 以下抜粋 ===
「……ねえサラ=フィンク、あれって、どういうことだったの?」
そこそこ繁盛している様子の小料理屋に入り、比較的奥まった空き卓に席を求めながら、ミルシェが小声でぼやく。
「正直、何が何だか、あたしには事情が掴めなかったわ……」
「あれ以上の面倒に巻き込まれなくて好かった、と思っておけ」
俺は小さく肩を竦め、寄ってきた給仕の少年に、摘まみ程度の軽食と林檎酒一杯ずつとを頼んだ。
……この世界で、“商人たちの国”とも呼ばれている、スタール王国。その都である“道の集う町”レイリーに、“念術王国”ハングォ王国第二の都市ランダからの海路を経て五日前に到着した俺サラ=フィンクとミルシェは、降り立ったばかりの港でちょっとした騒動に巻き込まれ、その後始末という形で、不本意ながら古代ダランバース魔道王国時代の遺跡探索に同行する羽目に陥った。
雇い主になったのは、騒動の渦中に居た老学者。彼が護衛として当てにしていた冒険者たちの幾人かが騒動の結果として働けなくなった為、巻き込まれた俺たちに「筋違いは百も承知だが責任を取ってくれ」と泣き付いてきたのだ。……全く以て筋違いもいい所だったが、降り掛かった火の粉を払う過程でその“当てにしていた”冒険者とやらの内の魔道士ひとりを俺が伸してしまっていたので、見込まれたのは必然と言えなくもなかった。まだ路銀は充分あったから素気なく断わっても良かったものの、相変わらず人の好いミルシェが「ホントに困ってるみたいだし、手伝ってあげたら?」と余計なことを言ったので、仕方なく引き受けたのである。
到着までに二日を要した郊外の遺跡探索自体は、特筆すべきこともなく片付いた。学者も下調べはきちんとしていたし、雇われ冒険者の中に居た盗賊の腕も確かだった。遺跡内で行く手を阻んだ怪物も三体の屍人で、偶々ミルシェが唯一歌える魔歌“魂よ安らかに”が通用する程度の奴らだった。最奥にあった倉庫のような一室を護っていたのも、他の雇われ冒険者たち――専業戦士や精霊使い、財神ハーザの神官戦士らだけでも何とか倒せる程度の鋼鉄製ゴーレム一体だけだった。その遺跡にあると見込まれていた一対の指輪も隠し部屋で見付かり、学者の目的は達成された、と思われた。
ところが、遺跡を出た所で、雇われ冒険者の一員だった盗賊と専業戦士が、「御苦労さん、じゃあこいつは貰っていくぜ」と指輪も含めた粗方の宝物を持ち去ろうとした。それはないだろう、と思った俺は咄嗟に念術で彼らの足を引っ掛けて転ばせ、精霊使いやハーザの神官戦士の手も借りて取り押さえたが、学者当人は何故か「仕方がないんじゃ」と、哀しげにかぶりを振る。……よくよく聞いてみると、そもそもの港での騒動が、どうも学者の抱えていた借金に関わっていたらしい。どうにか延ばしてもらった期日である三日後までに返済出来なければ、これまでの研究を纏めた論文の果てまでもが借金の形に持っていかれるのだという。
『多分、あの金貸しから、私が何かを見付けたらそれを返済に充てさせろと依頼されていたんじゃろうて……』
諦めたように呟く学者に、俺は「それはおかしいだろう」と呆れてみせた。
───「リファーシア新暦五二一年、夏の盛り、レイリーにて」より
