こちらのアイテムは2026/10/4(日)開催・文学フリマ福岡12にて入手できます。
くわしくは文学フリマ福岡12公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

小説BADOMA 血塗られた伝説 4/5

  • I-59〜60 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • しょうせつばどま ちぬられたでんせつ ごぶんのよん
  • 野間みつね
  • 書籍|A5
  • 124ページ
  • 450円
  • https://mitsune.jp/Epub/bibi/…
  • 2016/4/14(木)発行
  • 表紙・人物紹介画 高井玖実子(タカイクミコ)

    今の内に、確かめておきたかったからだよ。
    クニンガンが居ない間にな。


     紆余曲折を経て四つの“しるし”を全て手に入れたシフォロン達は、ヴィルシャナの塔へ向かう前に、長らく大陸とは行き来も途絶えていたという島アゾレスへ赴く。だが、その島には、或る言い伝えがあった。黒魔道師タンジェは、仲間たちと一旦別れ、単身ヴィルシャナ島へ先行しようとするが……

     1990年に株式会社アスキー(当時)から発売されたMSXコンピュータRPGコンストラクションツール「Dante」に収録されていたサンプルゲーム『BADOMA 血塗られた伝説』のノベライズ作品、全5巻予定の第4巻。
     元ゲームを御存じない方でも、普通に“何か「剣と魔法」のファンタジーっぽい”作品として読むことが可能。

     全巻完結しました。
     既刊情報等は、こちらの概要アイテムを御参照ください。

     === 以下抜粋 ===

     船旅は、僅か一日足らずで終わった。
     アゾレス島《とう》は、緑豊かな島であった。砂浜近くに船は停まり、八人は梯子を下《お》りて浜まで歩いた。勿論、船は、シフォロンの肩掛け袋の中に収められた。
    「ELCIA──エルシア、って、何だか聞いたことがある」
    「光世界のお姫さまの名前だと思うけれどね」
    「……正確には〝光の妖精姫《ブライト・フェアリー・プリンセス》〟だ」
     横合から挟まれた抑揚に乏しい声の主《ぬし》を、シフォロンは、そっと窺《うかが》い見た。限りなく無表情な顔の中、漆黒の瞳だけが昏い光を湛えている。この黒魔道師は、何故今迄《いままで》通り七人と旅をするのか、結局ひとことも話そうとはしなかった。ひとり舷側に凭《もた》れて来《こ》し方《かた》を見つめ、仲間たちの会話にも殆ど加わらず、為《ため》に最初は彼の同行を喜んだ七人も、今は何《なん》とはなしに居心地の悪さを覚えていた。これまでの単なる無口とは異なる、人を何処か不安に陥《おとしい》れるような闇の静けさに鎧《よろ》われているようにも思えるのだ。
    「それ、どういうお姫さまなの?」
     クニンガンが、くりっと首をかしげて尋ねる。
    「光世界の王フィリアスと、妖精世界の女王シリシアとの間《あいだ》に生まれた存在だ。光世界の住人は人間世界に対する関心が乏しいというのが定説だが、その光世界に住みながらも人間世界に関心を絶やさず、地方によっては〝金色《こんじき》の女神〟と崇《あが》められてる」
    「金色の女神かあ……へえ……」
    「光の妖精姫《き》が居るなら、闇の魔王子なんてのが居てもおかしくないわねー」
     ロココ・リナが頭の後ろで手指を組みながら何の気なしに言うと、黒魔道師はごくそっけなく肩を竦めた。
    「居るとも。〝闇の魔王子《ダーク・デーモン・プリンス》〟ジェナット。闇世界の王タルガルと、魔世界の女王セメネーとの間《あいだ》に生まれた存在。闇世界に住みながらも人間世界に関心を絶やさず……流石にこちらは神様扱いまではされちゃいないが、一部の黒魔道士たちが〝彼《か》の方《かた》〟と崇め奉《たてまつ》ってるって話は絶えない」
    「あんたは?」
    「俺は何かに跪いたり従属したりするのは嫌いだ。だからこそ……」
     言い止《さ》して、不意に彼は唇を皮肉っぽく歪《ゆが》めた。それ切り口を閉ざしてしまう。ロココは追及しようとする気が失せるのを感じた。
     最近のタンジェって突っ込み甲斐《がい》ないのよね──心にそう呟いて、小さな息をつく。
    (何か妙に暗いんだもん。前はあれでも可愛いとこあったけど、今は近寄りにくいとこあるし、たまーに口利けばなーんかハッキリしない上に刺《とげ》あるし)
     やはり、兄《あに》弟子《でし》サイラスの衝撃的な死が、心に拭《ぬぐ》えぬ影を落としているのだろうか。それだけではないような気もするのだが、取り敢《あ》えずロココにはそれぐらいしか原因が想像出来ないのであった。
    「あ、町かな、あれ」
     周囲をささやかな石垣に囲まれた家々が、一行《いっこう》の進む小《こ》径《みち》の彼方に見え始める。日が暮れかけていることもあり、明るい内に宿を取りたい一行の足は速まった。
     町の入口らしき所で、初老の男がふたり、木製の椅子《いす》に腰を下ろし、ゆっくりとパイプ煙草《たばこ》をくゆらせているのが目に入った。トーガのような、ゆったりとした服を纏っている。恐らくこの島は、大陸と比べると取り分け温暖で穏やかな気候なのであろう。自分たちの、旅で草臥《くたび》れ切った服装が──シフォロンの軽やかな、吟遊詩人らしい恰好《かっこう》でさえ──随分と無《ぶ》骨《こつ》で野暮《やぼ》臭く思われてくる。

         ───「第十二章 闇と魔の小径」より

ログインしませんか?

「気になる!」ボタンをクリックすると気になる出店者を記録できます。
「気になる!」ボタンを使えるようにするにはログインしてください。