星屑書房主宰の一路真実による短編小説集。
誰にも言えない痛みを抱える人たちが、少しだけ前へ進む。
小さな再生の物語。
全4作品収録。
(以下、作品より抜粋)
彼だって、離れたどこかの誰かと対なのだと思うと、歩の心臓はひやりとしてくる。やっぱり自分以外はみなつがいであるのだと突きつけられる。
――「手を叩いて眠れ」
「学生は破壊するのが得意だろう?」
トンガリは口の端を少し歪めて笑顔を見せた。
――「ブロークンメモリーズ」
「あら、聞いてなかったかしら。昨年度から新設された、忌引を取った社員だけが取得できる休暇なのよ。私もみんなに積極的に取得しなさいって言ってるんだけど、みんな結構怖がって取らないの」
「……怖がる?」
「ええ、でも大丈夫。使い方を間違わなければね。ほら、隣の課にいた吉川さんなんて黄泉休暇であちら側に渡ってしまって戻れなくなったのよ」
――「黄泉休暇」
別にグラフィティーアートみたいでもなく、サインでもなく、うまいわけでも下手でもない。 ゆきちゃんの自我の象徴としか言えないそれを見ていて、僕は耐えきれなかった。
「ゆきちゃん、彼氏いる?」
――「ハートのセーター」
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