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共和国の貴族

  • イ-12 (小説|歴史・古典)
  • きょうわこくのきぞく
  • 高森純一郎
  • 書籍|B5
  • 500円
  • 2012/11/18(日)発行
  • 1984年4月、日本人大蔵官僚の日野徹は、マニラに本部を置く国際機関・アジア開発銀行(通称ADB)への2年間の出向命令を受け、フィリピンへと降り立つ。折りしも同国は、前年8月に野党上院議員ベニグノ・アキノが空港で白昼堂々暗殺されるなど、大統領フェルディナンド・マルコスの強権支配と、それに対する野党陣営の反発により、政情不安へと陥っていた。

    着任からしばらくして日野は、フィリピン政府が計画している港湾開発事業の視察のため、マニラ南方100kmに位置する都市・バタンガスへと向かう。そこで日野を印象付けたのは、この島国に相変わらず根を張り続けている貧困もさることながら、日野の出向先であるADBにおもねり、何とかして港湾開発のための融資を取り付けようとするフィリピン政府と、その子飼いたる地元村長の執念だった。

    「独裁者マルコスのバラ巻き政策に融資などするべきではない。それはマルコスの独裁を是認することになりかねない」フィリピン人エリートを中心に、港湾開発に対する厳しい批判の声が起こる。しかし日野はそこに、同国上流階級の根底にある願望―成り上がりの独裁者に過ぎないマルコスを追放し、自分たちが国を支配したい―をはっきりと嗅ぎ取る。その願望は、独裁者を批判する「民主化勢力」という立場によって巧妙に隠された本心だと言えた。

    インフラ整備で人心掌握を狙う独裁者に、エリート階級の利己心からそれに反対する野党支持層。フィリピン国外に目を転じれば、自分たちの言う通りにならないマルコスを持て余し、フィリピンへの経済支援を減らすことでこれに対処しようとするアメリカ。アジアの一国であるにも拘らず、そのアメリカの顔色を伺い、追従してばかりの日本政府。更には、政府や大企業が関わるというだけの理由で港湾開発を阻止しようとする市民団体…。

    「港湾開発をすることで最も恩恵を被るのは誰か」その視点がことごとく欠落している現状に、日野は言い表しようのないフラストレーションを覚えずにいはいられなかった。

    そんな中日野は、バタンガスで知り合い、言葉を交わすようになった貧困層の女性からこう告げられる。

    「私の夫は、ここバタンガスの港がろくに整備もされていなかったせいで海難事故に巻き込まれ、命を落としたの。もう、そういう犠牲は出したくない。勿論、港の開発がマルコスの『人気取り』に過ぎないことは百も承知しているわ。でも、今尚この港の周りに住んでいる人たちの為にも、港湾開発を実現してほしい」

    彼女の言葉が、日野の態度を定める決定打となった。アキノ暗殺事件の容疑者を政府が放免し、マルコス政権に対する内外の批判がいよいよ頂点に達しようとする中、彼はバタンガス港の開発事業に対する融資を完遂させるべく奔走する…。

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